70年にわたる歴史の中で様々な事業を展開し、最適な環境づくりと持続可能な社会づくりを目指す菱機工業。現在はメディカルという新たな領域での新規事業の創出を目指しています。今回は北川 裕章様、保土田 晃滋様、丸山 慧大様にお話しを伺いました。
北川様:
弊社は「お客様と共に最適で持続可能な事業環境を創造する」をミッションとして掲げています。
一般的な経営企画部のミッションだと、経営者の意思決定をサポートすることがメインですが、私は取締役という立場なので「会社の次の事業をどうするか」ということもミッションの1つです。
北川様:
弊社は設立72年目ですが、1番最初の事業はアイスキャンディーやソフトクリームの製造機の販売からスタートしています。
そこから、様々な事業の変遷を経て、現在は建設設備業をメイン事業としています。
時代の移り変わりと共に様々な新しい事業に取り組むのが弊社の社風です。
直近で新規事業に力を入れているというよりも、既にこれまでの歴史の中で、様々な新規事業に取り組んできました。
■メディカルソリューション部 事業部長 保土田 晃滋 様
医療専門商社に医療機器の技術員として入社後、企画営業(図面・運営提案)にて医療施設の新築改築プロジェクト部門に従事。その後、医療コンサル業界にて大学病院等の医療機器整備、運営支援業務を経験後、医療サービス企業(滅菌・検査)にて営業企画、新規事業開発を経験し、2024年より菱機工業メディカル事業部門にて新規事業開発に関わる。
保土田様:
一方で、現在私たちが取り組んでいるメディカル領域での新規事業は、先ほどの文脈とは少し異なります。
メディカル領域は、菱機工業の中期計画の中でも注力していくことが決まっています。
しかし、自社の中にメディカル領域で特筆した技術を持っていないため、それらを保有しているスタートアップと協業し、新規事業を創出することを目指しています。
北川様:
今後どの領域に注力をしていくかを議論する中で、施工実績が多くあること、また設備の難易度が高い領域であること、の2つの軸で検討しました。
いくつか出てきた領域の中で、より付加価値が出せる領域はどこかを議論した結果、メディカル領域に着手することになりました。
保土田様:
施工実績は多いですが、提案型のビジネスになっていないことが課題でした。
ゼネコンや病院と打ち合わせをして、図面通りもしくはそれ以上を施工する技術は菱機工業にはあります。
ただ、病院に提案できるものは少ないです。
設計・企画段階もそうですし、運用してからも世の中の病気や情勢は変わっていくので、「今後こういう患者さんが来たときにはこの設備が必要で、私たちならすぐに用意できますよ」といった提案をできるようにしていきたいですね。
保土田様:
まずはメディカル領域でどのような取り組みができるのか、アイディア探しから始めていきました。
最初はスタートアップに限らず、大企業や中小企業の技術も候補でした。
ただ、私たちの方針としては、本業であるサブコン事業の技術と医療領域という飛び地の両軸で何かできないかを考えた時に、スタートアップも選択肢の1つだと捉え、本格的に探し始めました。
様々なスタートアップと会話するうちに、こんなこともできるんだと様々な可能性が生まれ始めてきました。
例えば、素晴らしい技術を持っていても、その技術をどうビジネスに繋げるかを模索しているスタートアップと出会うこともありました。
そのため、「その技術はメディカル領域でこんな使い方はできませんか?」と私たちからも提案しながら、協業の形を模索しています。
保土田様:
テーマというよりも、キーワードで探索する方がイメージとしては近いです。
多くの企業は、既存事業の延長や自社で不足している技術やリソースを元にテーマを選定し、それを満たすスタートアップを探しに行くケースが多いと思います。
ただ、私たちはメディカルという領域だけが決まっており、技術やビジネスモデルは決まっていません。
そのため、社内の会話などで生まれるキーワードを元に、「このスタートアップの技術はメディカル領域でも活かせるのではないか?」と仮説を持って実際にスタートアップと打ち合わせをし、私たちの仮説が合っているのかを検証しています。
北川様:
私たちは大手企業と同じ戦い方はできないと考えています。
なぜなら、社内でソーシングする人、技術的判断をする人、投資判断をする人をそれぞれ用意することが難しいからです。
一方で、大手企業はそれができるものの、意思決定に時間がかかるという課題があります。
また、専門性高く、狙いを定めてスタートアップを探す戦略もありますが、私たちはそうではなく、まずは幅広い様々な可能性を考えています。
私たちの戦い方としては、可能性のある企業とまず一度打ち合わせし、対話を通じて協業の形を探っていきます。
北川様:
資金面と事業基盤の2つだと考えています。
弊社は東日本に様々な施工実績があるので、実証実験場の提供ができます。
また、72年という歴史の中で蓄積してきたデータもスタートアップにノウハウ提供できると思います。
保土田様:
実証実験可能な環境を提供できるということは、スタートアップにとっても大きなメリットになるのではないかと考えています。
先ほど申し上げた病院だけではなく、施工実績のある様々な候補を用意することができます。
この実証実験をする環境の提供というのは、施工会社ならではの強みだと思います。
保土田様:
冒頭にお話ししました通り、まずはアイディア探しから始めていたので、様々な角度から情報収集していました。
とあるイベントに参加させて頂いた際に、データベースを提供している3社が出展していたので、比較するためにお話しを伺ったことがきっかけでした。
その時に営業担当の佐々木さんが、最も私たちの話を真摯に聞いてくださったのが、とても印象的でした。
他のデータベースやコンサルティングを提供している会社からは、「こういう手順じゃないと新規事業は上手くいきません」というような事例を紹介されることが多かったです。
しかし、先ほど申し上げましたが、私たちは狙いを定めて探索しているわけではなく、あえて幅広く探索しているので、その事例通りにできないんですよね。
そこで、スタートアップの掲載企業数が1番多いSTARTUP DBを評価し、導入することに至りました。
北川様:
私たちが特定のスタートアップと協業することが決まっていたら、STARTUP DBではなく、コンサルティングサービスがある会社を選んでいたかもしれないです。
STARTUP DBは、弊社の立ち上げのスピード感や課題感とマッチしていると感じます。
丸山様:
導入し始めた時は、毎日見ていました。
データベース上のデータは日々変化しており、タイミングを取りこぼさないように、定期的にチェックしていました。
最近は少しずつ接点を持てるスタートアップが多くなってきたので、その企業の事業内容を見たり、先ほど話にありましたキーワードでヒットした面談してみたい企業を探索することに使用しています。
また、STARTUP DBで探索したスタートアップをExcelでダウンロードして、チームメンバーとディスカッションする場合もあります。
丸山様:
私たちの中には、「こういうことがビジネスチャンスになるかもしれない」というイメージが何となくあるんですよ。
今まではそのイメージを言語化していませんでしたが、STARTUP DBを導入したことで、イメージを言語化するとどういうキーワードになるかを考えるようになりました。
例えば、仮に災害が起こったら病院はこんなことに困るんじゃないか?とイメージしたとき、それを言語化して、STARTUP DB上で”発電”や”排水”、”蓄電”といったエネルギーに関わるキーワードで検索していきます。
そこで検索されたスタートアップに、「貴社の発電事業は病院にも転用できるのではないかと考えています」とお声がけするのです。
丸山様:
STARTUP DBに掲載されているスタートアップの企業概要はもちろん見ています。
それに加えて、STARTUP DBから配信されているニュースサマリー(毎週の資金調達情報を配信するメールマガジン)は、参考にしていますね。
朝の出勤途中でメールを見て、保土田と「あの企業は面白そうじゃないか?」と会話します。
そこから実際に、私たちで提供できるものもお伝えしながら「貴社とはこういう取り組みができると思うのですが、一度お打ち合わせできませんか?」という流れで連絡しています。
ただ、イメージだけでは空中戦になりやすいと思っているので、スタートアップとお打ち合わせする際には、具体的な案に落とし込んでからお話しするよう気をつけています。
保土田様:
動かなければ何も情報が入らないというのは、様々なスタートアップに会う中で改めて分かってきたことでした。
これはSTARTUP DBのリストアップも活用しながら、多くのスタートアップと対話を繰り返すことで気づけた点です。
現場もそうですが、北川のような社内の決裁者と相談し、方向性を模索しながら活動していけば、様々な情報が入ってくると思い、今は活動しています。
北川様:
このメディカル領域の取り組みは、将来的な企業ブランドを強くする要因になるので、非常に期待しています。
スタートアップとの協業は様々な可能性が存在しているので、それを私の人生の中で見つけられればと考えています。
丸山様:
私たちは今、未来に向けた種まきをしている段階であり、すぐに目に見える成果が出るとは考えていません。
STARTUP DBを見ても、新たな資金調達が進んでいたり、M&Aされていたりとスタートアップの状況は目まぐるしく変化しています。
その中でどれだけ多くのチャンスを作りに行くかが重要になるため、1年後に声をかけてもらえたら良いなという意識も持っています。
シリーズが進んでいる企業はすぐに具体的な話ができますが、シード・アーリー期の企業はより時間軸を意識しないといけません。
明日明後日というような時間軸ではなく、中長期のパートナーとしてスタートアップと伴走ができればと考えています。
取材・執筆:久保田 裕也(for Startups, Inc.)
写真:佐々木 航平(for Startups, Inc.)
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