
1964年の創業以来、金融・製造・公共など幅広い産業のシステム企画から開発・運用までを担い、日本のデジタル基盤を支えてきたインテック。今回はスタートアップとの協業の窓口であり、出資機能を持つオープンイノベーションセンターの後藤様にお話を伺いました。
※本記事の組織名はインタビュー実施時点(2025年7月時点)の情報です。

■インキュベーションセンター シニアハイエンドスペシャリスト 後藤 光治 様
ITシステムの企画、開発、運用、コンサル、R&Dを経て、ビッグデータやデジタルマーケティングに関する新規サービスをローンチ。
その後、オープンイノベーション推進部門の設立に携わり、現在は、自らが新規事業を立ち上げるのではなく、立ち上げを下支えする支援活動を実施中。
ー後藤様のミッションや役割についてお聞かせください。
後藤様:
私はオープンイノベーションセンターという部署に所属しております。
役割としては、スタートアップとの協業の窓口になり、ご縁があれば出資も行っています。
ースタートアップと協業する目的はどのような点にあるのでしょうか?
後藤様:
目的としては、投資先との事業シナジーによる協業を実現し、戦略リターンを生み出すことを目指しています。
財務リターンを出すことももちろん視野に入っておりますが、私たちの前提として既存事業との協業の可能性がなければ、出資するということはありません。
ースタートアップとの取り組みが始まったのは、どのような背景があったのでしょうか?
後藤様:
当社は1964年からシステムインテグレーターとして、一貫して自社開発をしておりました。
ところが、近年のテクノロジーの進化は凄まじいほどスピーディーで、それに伴ってお客様のニーズも多様化してまいりました。
その上で、この変化にどう追随して先回りしていくかを議論した結果、当時の経営の判断でオープンイノベーションに取り組むことになりました。
技術革新の最前線を走っているのは、スタートアップの皆さんだと思うので、ぜひ当社としてもその技術をキャッチアップしたいと考えています。
ーだからこそ、財務リターンよりも戦略リターンを重視されているのですね
後藤様:
そうですね。社内の文化醸成を踏まえて戦略リターンを追い求めています。
財務リターンを前提に考えると、どの領域・分野に注力するかが論点になりますが、それは私たちの意図するものと少し異なります。
組織が切り離されたような取り組みは行わず、あくまでもインテックとしてどのような効果があるのかを見ています。
ースタートアップと協業する際に、既存事業の方々がリソースを割けないという課題もあるかと思うのですが、どのように対応しているのでしょうか?
後藤様:
工夫している部分がありまして、事業部の方に社内のオープンイノベーション推進者という役割を配置しております。
各事業部に配置している推進者と我々オープンイノベーションセンターが週次で打ち合わせをし、スタートアップとの協業によって、事業を伸ばすことができないかというディスカッションをしています。
まずは私と推進者で「このスタートアップと組めるのではないか?」というのを話し合った後に、私が仲介者となり、推進者とスタートアップで面談をしてもらう流れになります。
ー事業部内にスタートアップとの協業の窓口を決めるのは、コミュニケーションも取りやすくなりますね。
後藤様:
はい、様々な試行錯誤の上でこの方法を採用しています。
とはいえ、既存事業には収支責任もあるので、スタートアップとの協業の温度感は、どうしても事業部の責任者によって差があります。
そのため、12部ある事業本部すべてにオープンイノベーション推進者を配置できてはいないのですが、ゆくゆくは各事業本部に配置したいと考えています。

ー投資先を探すソーシングでは、具体的にはどのような業務を行っていますか?
後藤様:
大きく2つあります。
1つ目は、当社はLP出資を行っているので、GPとなるファンドの方からご紹介いただくケース。
2つ目は、イベントや問い合わせなどで、接点を持つケースです。
ー弊社が主催する成長産業カンファレンス「GRIC」にも協賛頂いてますよね
後藤様:
GRICは日本や海外の投資家・スタートアップと接点を持てるため、とても素晴らしいイベントだと思っています。
特に、1組5分でスタートアップとディスカッションできるSPEED DATINGは、普段のイベントでは出会えないような方々と話せるため、非常に重宝しております。
実際にそこで出会った方とは、イベント後でも様々な形で情報交換しています。

ーここからはSTARTUP DBについて伺えればと思います。導入のきっかけや経緯について教えて頂けますか?
後藤様:
フォースタートアップスの「熱狂的なファン」になったという言葉に尽きます。
スタートアップに特化したデータベースは他にも複数ありますが、私は機能で比較して決めたというよりも、貴社が目指す世界に非常に共感し、STARTUPDB導入の1番の決め手です。
当時の営業担当からこの世界観を情熱的にお話しされていて、それに魅せられてしまいました。

ー普段の業務において、STARTUP DBのどのような情報を閲覧していますか?
後藤様:
目的はソーシングする過程でお会いしたスタートアップを検索して、追加情報を見ています。
資金調達のラウンド間の短さや従業員数推移などで、スタートアップの成長速度を確認しています。
ーSTARTUP DBのどのようなタイミングで閲覧することが多いですか?
後藤様:
先ほどのオープンイノベーション推進者に引き合わせる前に必ず見るようにしています。
スタートアップと直接会話した内容とSTARTUPDBの情報を照らし合わせることで、「ファクトチェック」の役割を果たしています。
実態が分かっていないスタートアップと事業部をいきなり繋げると期待値とのギャップが多数発生することになりかねません。
スタートアップの情報は集めにくい部分があるので、証明をすることもなかなか難しいです。

ーもし、STARTUP DBがなかったらどのような課題やリスクに直面するでしょうか?
後藤様:
もう怖いですね。
LP出資先のファンドからご紹介いただく場合はある程度信頼感があるのですが、イベントでお会いしたスタートアップは、STARTUPDBがないと先ほどの期待値ギャップは避けられないのではないのでしょうか。
STARTUPDBがあれば、事業概要文からスタートアップの事業内容が分かり、ファイナンス情報からどのような投資家から資金調達しているのかが分かります。
これがスタートアップの客観的な情報になります。
STARTUPDBがなければ、これらの情報を探索するためには登記簿やプレスリリースの情報を時系列を追って漏れなく探さなければならないため、非常に時間がかかります。
事業部との引き合わせのことも考えると、「実際に話してみると期待値ギャップがあり、協業に進みませんでした」という案件が増えるのは我々としてもスタートアップとしても有意義な時間にならないため、可能な限り避けたいです。
そのように考えると、STARTUPDBがあるとないとでは協業の成功率は大きく変化すると想像できます。
ー最後に今後の展望についてお聞かせください
後藤様:
ここ数年、スタートアップ業界全体が非常に盛り上がっていると感じています。
特に出口戦略の部分ではIPOだけではなく、M&AやスイングバイIPOなど、手段が多種多様になっています。
ただ、これらは1社だけで完結することではありません。
そのため、同じ悩みを持って、同じ目線の同じ空気を吸っている人たち同士が横の繋がりを増やして、エコシステム全体の底上げをしていくことが重要になると常々感じています。
それを仕掛けられるプレイヤーは限られていますが、私はフォースタートアップスこそそのプレイヤーであり、STARTUPDBやGRICはまさにそういう場になっているなと思うので、当社としても引き続きスポンサードしていく予定です。

取材・執筆:久保田裕也(フォースタートアップス株式会社)
写真:佐々木 航平(フォースタートアップス株式会社)